Tiger Uppercut!〜ある秋田人の咆哮

タイガー!タイガー!アッパカーッ! 秋田の歴史、文化、グルメ、時事、そしてステキな未来を書き下ろし!
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時の女神
私の幼少期は幽霊との戦いの日々だった。
実に過酷で激しい長い長い戦いだった。
いかに深い眠りであろうと物音がするとびびって起き、
特に近所で誰かが死ぬとその幽霊がいつくるかいつくるかと怯え、
寝られない日々を過ごした。



たとえ夜中に尿意をもよおしても体力と精神力の限界まで耐え続け、
もはやこれまでというところまでくると、
いちいち幽霊との決戦を覚悟して、
はるか1階にあるトイレまで特攻の精神で一歩一歩おそるおそる前進した。
そのときに私があみ出した破邪の呪文を唱えながら進むのだけれども、
どんな呪文だったのかは恥ずかしすぎてここではとても言えない。



さらに、トイレ前の幽霊との決戦において、
武運つたなく敗れてしまったときのための伝令として、
隣ですやすや寝ている妹を常に叩き起こして、
私のトイレに、いや戦場に同伴させた。
妹にしてみれば私に殺意を持ったに違いない。
しかし、そんなことなどおかまいなしに私は幽霊との戦いに明け暮れた。
そんなもんだから必然的に朝寝坊して、
朝になると今度は怒り狂って怒号を浴びせる母親と戦う羽目になった。
私の幼少期は血塗られていた。

その中でも最強で最大の敵だったのが、
若い女の幽霊だったのだ。



今から30年ちょっと前に近所で火事がおきて、一家全焼。
その新築の新婚家庭は業火によって灰燼と化し、
焼け跡からは嫁いできたばかりの若くて美しい女性の焼死体が発見された。
そしてそのときから、
その亡くなった彼女と私という少年の長い戦いが始まったのだ。
彼女はその事故の直後からすぐに、

「白い服を着た髪の長い若い女の幽霊が道に立っている」

という噂になった。
それを見たという目撃証言も何度も聞き、私は最高レベルで警戒した。
実は夢には何度も出てきたのだ。
あまりにも出てきたのではっきり覚えている。
私の中での幽霊の原型とはその夢の中に出てきた彼女そのものだ。

そのため、私は対彼女専用の強力な呪文もあみ出した。
それだけでなく特別に独自の印(振り付け)まで開発した。
もちろんここでは公開できない。その途端、私のキャリアは崩壊する。
しかしここだけの話、左腕には黒龍王を棲まわせることに成功していたし、
ザラキも実用化まであと一歩のところまでいっていた。
バハムートを召還しようと思えばそんなに難しいことではなかっただろう。



そこまで万全を期していたにも関わらず結局、決戦の時は訪れず、
すやすや眠る妹は毎晩のように出動を要請され、母親は毎朝怒り狂う。
私の人格は崩壊寸前になるまで追い詰められた。
そんな日々をどれだけ過ごしただろう。
彼女はそれほどの強敵だったのだ。

そして30余年が過ぎ。

なんとその積年のライバルの実在の姪が、今、会社にいる。
その火事の直後に生まれたというその姪は、
叔母の生まれ変わりだといわれて育てられたという。
そして奇しくも。
嫁いだ先も同じ場所。
生まれ変わった彼女が選んだ名前はアツコ。
こんな運命があり得るものだろうか。

入社して、その身の上を彼女から聞いたときに、戦慄した。
あの幽霊は30年の時を越えてずっと自分を見てくれているんだと。
おそらく生き写しなんだろう彼女の顔を見ていると、
30年前からずっと見守られているような感覚になる。
あの人は幽霊ではなかった。
時の女神だったのだ。



もしも火事にさえ遭わなければ彼女の未来は燦々としていた。
どんなに心残りだっただろうか。
新しい家庭、未来と希望のあふれる家庭。
すべて火炎の中に消えた。
しかも突如、一夜にして。

当時、若い彼女の思いは残っただろう。
そして、近所の私を見つけ、私の夢の中に現れ、
今、私を助けようとして生まれ変わってくれているのかもしれない。
いやその遭難、死でさえ、今のための運命であったのかもしれない。

千年に一度だといわれる大震災直後に私の前に現れた実在のアツコ。
この因縁を思い出すたびに、
時空を超越したとてつもない宇宙規模の「やさしさ」を感じる。
昔の人はこういう感覚を観音様とかマリア様とか言ったのかもしれない。

そして事実、
その姪であるアツコの働きなしには私は少しも仕事を進めれない。
会社にとっても私にとっても大切な存在だ。

いろんな存在に自分は見守られている。
だから絶対に私は立派な人間にならなければいけない。
そして私が今生きている世の中に対して恩返しをしなければならない。
という思いをあらためて誓い、すべての呪文を封印した。

 
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